認知症編(第二回) Dr.藤田の健康コラム
第二回目の健康コラムです。アルツハイマー型認知症は今から100年以上前にドイツのアルツハイマー医師が報告した認知症の中で一番有名な病気です。

脳内に異常なたんぱく質がたまる病気で神経細胞の中にはタウタンパク、神経細胞外にはアミロイドβという物質の異常蓄積が起こることで、認知症がおこります。65歳未満で発病すると「若年型」といわれますが、病理所見は何歳で発病してもほぼ同様です。従って老年型認知症という言葉は使われなくなりました。遺伝性の認知症は報告はあるのですが、きわめてまれです。多くは遺伝性ではなく孤発性です。
認知症の半分はアルツハイマー型です。発病は初老期から老年期にかけて症状はゆっくり進みます。最近のことが思い出せないという記憶障害が多いです。昔のことは鮮明に覚えていることが多いので、本当に認知症なのだろうかと家族さんや友人の方々は疑心暗鬼になることが多いです。
例えば今の総理大臣は政治に興味がないので知らないという答えをする方でも、所得倍増論や日本列島改造論・戦後政治の総決算など細部まで知っているというお年寄りはおります。相撲には興味がないし今の相撲取りは知らないけれども、おじいちゃんの琴桜や大鵬のことをよく知っている人もいるのです。「孫が相撲取りだって?しらない」という反応もたまにあります。王選手や長嶋選手を知っているのに「大谷」って誰?という答えをする方もおりました。

最近のことがわからないので、今日の日付や曜日がわからない人がいます。なので、約束を守れない、ごみの出す日や、資源ごみと生ごみの仕分けができない、薬を飲んだかどうかわからないなどの症状も出てきます。自転車にも乗れますし、包丁も上手に使えます。体で覚えたことは結構最後まで保たれます。
強調したいのは車の運転です。自動車の運転は注意力や判断力の低下がいずれ起こりますので認知症初期には何とかなっていても、いずれ視空間障害(前後や奥行きの認識)を伴うため小さな違反や車庫入れ失敗などを起こしますので、免許返納を促しております。車の運転をやめましょうと説明しますと「お前は鬼か!」という反応が返ってくることが多いですが、自分のためお互いのため社会のためです。歩いて行ける範囲に住む「集住」という選択肢を若いうちから考えねばならぬ未来が来るように思います。

さらに、「取り繕い行動」という症状があります。答えられない質問を受けたときに無意識に「ごまかしてしまうこと」です。年だしね、興味ないしね、テレビ見ないしね、など様々あります。隣に家族がいると「振り返り」して、代わりにこたえてもらおうとしたりします。初期から人格が崩壊することはほとんどありません。身につけた礼節や経験は簡単に失われないのです。初期認知症の患者さんが冠婚葬祭で見事な挨拶や立ち居振る舞いをなさる姿を何度か見てまいりました。堂々としたお話ができるのに、ちょっとしたことを覚えていないすぐに忘れることで周囲は大きな違和感を覚えます。先ほどした約束を覚えていない。昨日のことをすっぽり忘れている、先ほどご飯を食べたのに「ご飯はまだ?」と。初期には「あー勘違いだった」とか、言いつくろいをしますが、中期になると本気で怒りだしたりして、人間関係に問題を生じてきます。認知症の初期症状はなかなか気づきにくいので、詳述しました。
次回は中期以降の症状を説明いたします。
