認知症予防
~住み慣れた地域で暮らしていくために~
認知症の40%は予防できます。
認知症の予防はできるのか?遺伝的要素が強いのではないのか、そ
しておおよそは加齢現象ではないのか、こういう考えがあると思い
ます。
私たち臨床医は「脳卒中を予防すれば脳血管性認知症は予防するこ
とができるし、アルツハイマー病も禁煙やアルコールの過剰摂取を
避けることで、減らせるのではないかと信じて」いました
。2017年にLancetという医学雑誌に掲載された論文で12の認
知症発病に係る因子と、その関係が明らかにされました。
中年期以降で改善ないし予防できる可能性のあるもので、一番大
きなリスクは難聴です。次いで喫煙・抑うつ・社会的孤立・頭部外
傷・運動不足・高血圧・大気汚染・過剰飲酒・糖尿病・肥満と続き
ます。
これらを治療や生活習慣の見直しで改善できれば、リスクは格段に
減ります。そのリスク改善可能性はこの論文で40%と推計されま
した。
その後の研究で、睡眠薬の適正使用、いびきをかかない程度の体重
維持と飲酒制限、睡眠時無呼吸症候群の治療でさらに10%近く減
らすことができるのではないか、そういう推論が最近なされていま
す。
睡眠薬は従来からはベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系が
主流でしたが、最近はオレキシン受容体拮抗薬、メラトニン系の薬
が発売されています。睡眠薬や精神安定薬を、より転倒骨折の危険
性の低いものへ、依存性の低いものへ変更することで、認知症のリ
スクは下げられると思います。