新年あけましておめでとうございます。
おかげさまで開院して三度目の新たな年を迎えることができましたこと、地域の皆様に感謝申し上げます。
ここ数年頭痛、特に片頭痛の予防注射治療が進歩しました。
90%以上の有効率です。受験など大事な時や、仕事や家庭に打ち込めない女性の悩みを大きく解消してくれました。
また、認知症の予防に欠かせない睡眠の悩み、特に睡眠時無呼吸症候群の方が多くおられます。
認知症の早期発見のみならず、壮年中年期からの予防治療に力を入れております。
もちろん、脳神経全般の診療をグレードアップするべく頑張っております。
巳年です、新たに脱皮して一歩一歩進歩し続けるように、新たな年に、心新たに臨みます。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
長生きを楽しみ、百寿を目指す。
新型コロナウイルスのパンデミックの恐怖はだいぶ緩和されました。
しかしながら、2020年からの二年間で日本の平均寿命は2年近く低下した近年まれにみる事態となりました。
現在でも65歳以上の年代では、新型コロナ感染症は重症肺炎の原因ですので、年配の方々はなるべくワクチン接種を受けてください。
さて2023年になって、やっと日本人の平均寿命は延びて女性87.14歳、男性81.09歳になりました。
女性の二人に一人、男性の4人に一人が90歳以上まで長生きするといわれています。
昭和の終わりに比べると倍以上の割合で、90歳の卒寿を迎えられます。
でもなぜ男性の方が6年も早死にするのでしょうか?理由は複数あります。
男性は危険業務に就くことが多く事故に巻き込まれやすいこと。又男性の方が一般的に健康に無頓着で、アルコール過飲や喫煙の問題もあります。
女性ホルモンは動脈硬化予防や血圧にも関連があり、心筋梗塞や脳卒中は圧倒的に女性で少ないことも大きな理由です。
さて大きな問題は癌死亡・心臓病が増えていることです。
減り続けているものの後遺症の大きさからみて脳卒中も大きな問題です。
この三つの病気は、三大死因の疾患と位置付けられています。では、この三つの疾患がこの世からなくなれば一体何年寿命が延びるのでしょうか。
答えは9年です。高齢になりますと肺炎が増え、腎臓肝臓の疾患も増えますので、三大死因が克服されても、寿命は簡単に100を超えません。
でも三大死因への対処で女性96歳、男性90歳は夢ではなくなりました。
学会で提唱する「日本人のためのがん予防法(5+1)」は、1塩分を含めた食生活の見直し、2節酒する、3禁煙する、4運動する、5適正体重を維持する、6最後に肝炎ウイルスやピロリ菌などの感染症に対処する、です。感染症以外の5つは、脳卒中および認知症予防の項目とまったく一致します。もちろん予防率は100%ではありませんので、がん検診などで早期発見早期治療が必要です。
次いで脳卒中予防です、1高血圧の治療、2糖尿病の治療、3不整脈対策、4禁煙、5節酒、6高脂血症対策、7塩分と脂肪を控える、8運動、9太りすぎはだめ、10脳卒中起きたらすぐに病院へ、です。9番までは認知症予防と同じです。
最後に認知症予防です。2024年夏にLancet誌に報告されました。
1若年期の教育の不足、2から11番目は中年期の因子です。2難聴、3高LDLコレステロール血症、4うつ病、5頭部外傷、6身体活動の欠如(運動不足)、7糖尿病、8喫煙、9高血圧、10肥満、11過度の飲酒、12から14は高齢期の因子です、12社会的接触の欠如(孤立)、13大気汚染、14視力低下です。
1の教育の不足は趣味やサークル活動・寿大学で対策可能です。2難聴4うつ病14視力低下は医療機関で対応可能です、補聴器を恥ずかしがらないでください。
13大気汚染の原因として、家庭内では電子タバコが挙げられますので、注意してください。
5の頭部外傷はボクシングのパンチドランカーで証明されています。スポーツ外傷に注意してください。
大問題は12の孤立です。例えば、今日行くところがある、今日会う人がいる、今日することがある。ほんのわずかでよいのです。
散歩する会話する、ちょっとおしゃれ。お茶を飲む友人がいる。とても大事なことです。
三大死因を避けられても、足腰が弱かったり、認知機能が落ちてしまったりして、そこで誰とも接触がない、応援を頼まず孤立してしまう、そういう人生を選択すると長生きをしても楽しみも何もないということになりかねません。
Lancet誌でまだ取り上げられていませんが、睡眠が大きな健康要素です。
眠っている最中に、脚がむずむずして眠れない、悪夢をみて大声を出してしまう、朝方こむら返りを起こして目が覚める、いびきがひどく呼吸が頻繁に止まる、こういう状態になると、寝ている間に記憶の強化ができないこと・脳のごみ(アミロイドβ)を排泄できないがためにアルツハイマー型認知症になりやすくなります。睡眠に問題を抱えている方は早めの対処が必要です。
オレキシン拮抗薬という体に優しい睡眠薬が今三種類使えるようになりました。睡眠医学の発展には目を見張るものがあります。
結びに、生活習慣病を避ける、足腰を少しでも達者にする、ボケもそれなり年相応、そういう人生を生きて、きんさんやぎんさんのように笑顔で毎日生活したいものです。
いつまでも一人で自分のことを何とかすることも大事ですが、いずれ困る前に保健医療、福祉介護を頼ってください。
「いま・ここ・わたし」を一人だけで完結せずに、地域のつながりを大切にして、長生きを楽しみませんか。